最終ログイン02:44 ~ライバー失踪事件~
リアルな会場で繰り広げられる協力型謎解きゲーム
2026年3月 coming soon

Story
霧ヶ峰村のはなし
──神に愛された者は、不幸になる。
うちの曾祖母が、生きていた頃によく話していた。
「あんた、山の神ってのはね、優しすぎてもいけないんだよ」
その意味がわからないまま、大人になっていったけれど、
ある日、古いノートの切れ端を見つけた。
表紙には、震える字でこう書かれていた。
『霧ヶ峰村記録 外へ出すべからず』
そこに綴られていたのは、
今は地図にも載っていない村の、終わりの物語だった。
その村は、山あいの小さな集落だったという。
冬は雪に閉ざされ、夏は霧に包まれ、
外の人間が足を踏み入れることはほとんどなかった。
ある年、村に「疱瘡」が流行った。
顔や体に斑点が浮かび、熱にうなされ、
子どもから先に死んでいく、恐ろしい病だった。
祈っても、祈っても、誰も助からない。
そんな時だった。
山の奥で鉱山をやっていた連中が、
不思議な石を見つけたのだという。
赤とも黒ともつかない、どろりとした色。
火にくべると淡く光り、
水に沈めると、周りの水がじわじわと濁っていく。
年寄りたちは口を揃えて言った。
「あれは山の神の涙だ。掘り出しちゃいけねえ。
溶かしちゃいけねえ。触るのもいけねえ。」
けれど、鉱山を仕切っていた九条という家は笑ってこう言った。
「神様の涙なら、なおさらありがたい。
村を救う薬になるかもしれんじゃないか。」
その日から、その石は「火々色金(ひひいろかね)」と呼ばれ、
村の男たちは夜通しそれを溶かし続けた。
不思議なことに、やがて疱瘡の流行はおさまりはじめる。
死者は減り、熱にうなされていた子どもたちも目を覚ました。
けれど、代わりに別の噂が立つようになった。
「神さまの声が聞こえる子どもがいる」
村のあちこちで、四人の少女の名前が挙がった。
清花、綾子、霧子、真夜。
彼女たちは、ある晩を境に同じことを言い始めた。
「山の上から、誰かが呼んでる」
「井戸の底から、歌が聞こえる」
「泣いてる声がする。嬉しいのか、悲しいのかわからない」
九条家は、それを「神の啓示」だと受け取った。
少女たちは村で「巫女」と呼ばれ、
九条家が中心となって「朱の血脈」という集まりができた。
朱の血脈は、火々色金を「御神体」として祀り上げた。
山に石の祠が建てられ、村人たちは順番に参拝させられた。
いつのまにか、
「巫女を疑う者は、神を疑う者」
そんな空気が村を支配し始める。
やがて、奇妙なことが増えていった。
ある家の井戸から、鉄のような匂いがする
夜中、山の方から誰もいないのに歌声が降りてくる
巫女の周りにいる人間ばかり、次々と弱っていく
けれど、巫女たちだけは、いつまでも元気だった。
それどころか、時間が経つほどに
瞳の色まで変わっていったと書かれている。
「赤い月みたいな目をしていた」と。
ある晩を境に、四人の少女は姿を消した。
家族の証言はバラバラだった。
「山へお呼ばれしたんだと言って出ていった」
「自分の大切なものを“捧げに行く”と言った」
「笑っていたのか、泣いていたのか、わからない顔で…」
九条家の者は、村の広場でこう宣言したという。
「神は、彼女たちを連れていかれた。これで、村は救われる。」
その夜から、村は静まり返った。
病はたしかに止まったらしい。
けれど、ほんとうの地獄は、そのあとだった。
数日もしないうちに、
村の井戸水がひとつ、またひとつと使えなくなった。
最初は、ただの濁りだと思われた。
そのうち、汲んだ水の表面に
油のような、虹色の膜が浮かぶようになった。
喉の渇きに耐えきれず、その水を飲んだ者から倒れていく。
腹を押さえ、口から泡を吹き、
指先と唇を紫に変えながら、数日かけて死んでいく。
ノートには、こう書かれていた。
「村人は、巫女たちが山のどこかに眠っていると信じていた。
土の下から、ずっと呼ぶ声がしていたからだ。」
それが本当かどうかは、誰にもわからない。
ただ、最後のページには
震えた文字で、こう残されていた。
火々色金は、山の神の涙にあらず。
人が欲に溺れてこしらえた、毒の塊なり。
神に愛された四人の巫女は、
村とともに、土の底へ沈められたり。
そして、その下に赤いペンで、誰かが書き足している。
「神に愛された者は、不幸になる」
ノートはそこまでで終わっていた。
霧ヶ峰村が本当に存在したのか、
朱の血脈が実在したのか、
確かめる術は、もうほとんど残っていない。
けれど、ネットの片隅では、今でも時々こんな書き込みを見る。
「山奥の廃墟で、赤黒い石を見つけた」
「夜中、井戸の底から女の声がした」
「“また四人、選ばなきゃね”って聞こえた」
そして決まって、そのスレッドの最後には、
誰かがこの一文を貼っていくのだという。
神に愛された者は、不幸になる。
──霧ヶ峰村 朱の血脈・古記より
会社概要
株式会社ハルモニクスが提供する体験型こわい謎解きゲームは、没入感溢れる恐怖体験を提供します。弊社ウェブサイトでは、イベントスケジュール、ゲーム情報、チケット購入リンクが提供されます。関東地方での運営に加え、オンラインでアクセス可能です。弊社は参加者との交流を促進し、SNSを通じて活動を発信してまいります。
弊社の主事業はライバーマネジメントです。普段はライブ配信を中心に活動するライバーの育成、マネジメントを実施しております。


